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加入していないとどうなる?未加入のリスクと罰則

建設業の現場では、日々ケガや事故のリスクがつきものです。元請・下請の立場を問わず、現場で働く一人親方や個人事業主が労災保険に加入していない状態で作業を行うことは、想像以上に大きなリスクを伴います。ここでは、一人親方特別労災への未加入による具体的なリスクや、場合によっては発生する法的な責任・罰則について整理します。


1.「労災保険未加入」は自己責任では済まない時代

一人親方は雇用されている労働者とは異なり、原則として労働者災害補償保険法の適用外です。そのため、通常の労働者のように自動的に労災保険の対象にはなりません。しかし、建設現場では元請業者や発注者が「安全管理責任」を負うことが多く、実務上は一人親方が労災保険に加入していないことが、元請側のリスクにも直結します。

元請会社からすれば、「労災保険未加入の一人親方」を現場に入れることで、安全衛生管理体制の不備を指摘されるおそれがあり、重大事故発生時には監督署からの指導・是正勧告に発展するケースもあります。つまり、未加入は「自己責任」で済まされる問題ではなく、現場全体に波及するリスクなのです。


2.ケガや死亡事故発生時の「自己負担リスク」

最も深刻なのは、現場でのケガや死亡事故です。一人親方特別労災に加入していれば、治療費・休業補償・障害補償・遺族補償などが労災保険から給付されます。しかし未加入の場合、これらの費用はすべて自己負担となり、数百万円から数千万円単位の損害を被る可能性もあります。

特に重度障害や死亡事故の際には、遺族の生活支援費や損害賠償請求の問題が生じ、民事訴訟に発展するケースも珍しくありません。実際、私が顧問を務める建設業者でも、未加入の外注職人が事故に遭い、元請との間で責任分担をめぐるトラブルが発生したことがあります。このような事例を見ると、「加入しておくことが最大のリスクヘッジ」であることを痛感します。


3.元請・発注者側の行政リスク

一人親方が労災に未加入のまま現場に入っている場合、元請会社や発注者が安全衛生管理義務を怠ったと見なされるおそれがあります。労働安全衛生法では、元請業者に対して「下請・一人親方を含めた現場の安全確保」を求めています。

このため、監督署の臨検調査で未加入者が多数いることが発覚すると、是正勧告や指導書の発行を受けることもあります。場合によっては入札資格の停止や、建設業許可の更新に悪影響を及ぼすこともあり、経営上の信用リスクとしても軽視できません。

また、公共工事や大手ゼネコンの現場では「特別加入証明書」の提出を求めるケースが増えています。証明書が提出できない場合、現場入場を拒否されることもあるため、仕事の機会を失うという実務的な損失も発生します。


4.労働保険未加入に対する罰則・行政処分

一人親方特別労災自体は任意加入制度であり、「未加入そのもの」に直接の罰則はありません。しかし、雇用関係にある労働者を使っているにもかかわらず、労働保険(労災・雇用)に加入していない場合は、明確な違法行為となります。

労働保険徴収法第52条では、「労災保険に加入せずに事業を行った者」に対して、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。実際、建設業では「実質的に雇用関係があるのに一人親方扱いしていた」というケースも見受けられ、このような偽装一人親方問題は監督署が特に注視する分野です。

つまり、「本来は労働者であるのに、形式上だけ一人親方として扱っている」場合には、行政処分や追徴金のリスクも発生します。未加入というだけでなく、「誤った区分」が法的責任を招く点に注意が必要です。


5.現場で実際に起きているトラブル事例

私がこれまで見てきた事例では、未加入のまま作業中に骨折した一人親方が、治療費と休業期間中の収入補償をめぐって元請会社と揉めたケースがありました。元請側は「請負契約だから労災補償の義務はない」と主張しましたが、実態としては指揮命令関係があったため、監督署の調査で「雇用関係に近い」と判断されました。結果的に元請が治療費の一部を負担し、関係が悪化して契約解除に至りました。

このように、未加入によるトラブルは、金銭的損害だけでなく「信用関係の崩壊」をもたらすことが多いのです。とくに中小の建設事業者では、限られたネットワークで仕事を回しているため、こうしたトラブルは致命的です。


6.社労士が勧める「未加入リスク対策」

特別労災の加入は、費用対効果の高い自己防衛策です。年間保険料は給付基礎日額をもとに算出され、例えば日額12,000円の設定でも年間数万円程度。事故発生時の補償金額を考えれば、極めて小さな投資で大きな安心を得られます。

また、加入手続きは労働保険事務組合を通じて簡単に行うことができ、証明書発行までの期間も短いのが一般的です。事務組合によっては、更新管理や変更届も代行してくれるため、事業主の負担も少なく済みます。

私が顧問を務める建設会社でも、「協力業者がすべて特別加入しているか」をチェックリスト化し、未加入者には加入を促すルールを整備しています。安全書類と同様に、「特別加入証明書」を現場入場条件とする仕組みを構築することが、事故防止とリスクマネジメントの観点から非常に有効です。


7.まとめ:未加入リスクは“見えない損失”を生む

一人親方特別労災への未加入は、「保険料を節約したつもり」が「数百万円の損失」につながる典型的なリスクです。法的罰則がなくても、事故・トラブル・信用失墜といった“実害”は極めて大きく、現場で働くすべての人にとって避けて通れない課題です。

社労士としては、事前にリスクを明確化し、加入を標準化する体制づくりを強く推奨します。特別労災は「もしもの時の備え」ではなく、「日常の安全体制の一部」として位置づけることが、これからの建設業経営には欠かせません。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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