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建設業以外の一人親方も加入できる?
対象業種の拡大傾向

「一人親方特別労災」と聞くと、建設業を思い浮かべる方が多いと思います。実際、特別加入制度が最も多く利用されているのは建設業分野です。しかし、近年では建設業以外にもこの制度を活用できる業種が増えており、幅広い職種で一人親方が労災補償を受けられる環境が整いつつあります。本稿では、特別加入制度の基本から、対象業種の拡大傾向、建設業における注意点まで、専門的な視点で整理します。


一人親方特別加入制度の基本的な位置づけ

労災保険は原則として「労働者」を対象とする制度ですが、業務上の危険性が高い自営業者などに対しても、一定の条件を満たせば「特別加入」として適用が認められています。この特別加入の代表例が「一人親方特別労災」です。
建設業に従事する個人事業主や、請負契約で働く職人が、労働者と同様の補償を受けられる仕組みです。加入手続きは労働保険事務組合を通じて行うのが一般的であり、年度更新や保険料算定も事務組合を介して行われます。


対象業種の範囲と拡大の背景

特別加入制度の対象となるのは、建設業をはじめ、林業、漁業、清掃業、運送業、電気工事業など、危険性の高い業種が中心でした。しかし、厚生労働省は社会の働き方の多様化を踏まえ、順次対象業種を拡大しています。
例えば、近年では以下のような業種も加入対象として認められています。

  • 建設機械運転者

  • とび職、型枠大工、内装工、配管工などの建設関連業

  • 林業従事者(伐採・搬出等)

  • 運送業(軽貨物運送ドライバーなど)

  • 清掃・廃棄物処理業(ビル清掃、廃材回収など)

  • 個人で請け負う電気工事・設備工事業

  • 柔道整復師、理容・美容業など一部のサービス業

こうした拡大の背景には、「雇用によらない働き方」の広がりがあります。フリーランスや個人請負が増加し、事故や災害リスクを自ら負う働き手が増えたことから、労災保険制度の適用範囲を広げる必要性が高まったのです。


建設業と他業種の比較―危険度と補償の必要性

建設業は墜落・転落・重機事故など、労災事故が最も多い分野であり、従来から特別加入の主軸を担ってきました。
一方、運送業や林業、解体・清掃業なども高い労災リスクを抱えています。特に個人事業主が自ら運転・作業を行う場合、事故による休業損失がそのまま収入減に直結するため、労災補償の必要性は建設業と同等です。
また、最近では「ドローン撮影業務」「足場点検」「内装リフォーム請負」など、従来の枠にとらわれない新しい職種でも労災の危険性が指摘されています。


特別加入の対象拡大と今後の動向

厚生労働省は近年、個人請負労働者の保護を強化する方針を打ち出しており、令和5年以降、IT技術者や配達員(ギグワーカー)など新たな業種への適用検討が進められています。
特にフードデリバリー(自転車・バイク)業務や、プラットフォーム経由で仕事を請ける個人事業主など、雇用に該当しない働き方が増えたことから、今後は「フリーランス労災補償制度」としての拡張が見込まれます。

この動きは建設業界にも影響を及ぼしています。建設現場では元請が一人親方に対して特別加入証明書の提示を求めるケースが増加しており、「加入していなければ現場に入れない」という運用も一般化しています。したがって、今後の拡大傾向を踏まえた加入管理は、事業者・一人親方双方にとって重要なテーマとなるでしょう。


建設業における実務上の注意点

建設業の一人親方が特別加入をする際には、以下の点に注意が必要です。

  1. 加入単位の確認
    建設業では、元請業者がまとめて加入している「団体特別加入制度」を利用するケースが多く、加入窓口である労働保険事務組合が定める単位に従う必要があります。

  2. 就労実態の把握
    雇用関係が発生している場合(作業時間の拘束、指揮命令下での業務等)は、一人親方としての加入ではなく、労働者として扱われる可能性があります。契約形態が曖昧な場合は、労働基準監督署で「労働者性」の判断を受けることも想定されます。

  3. 通勤災害の取扱い
    一人親方の通勤災害は「現場への移動中の事故」に限定される傾向があります。マイカー通勤の場合は、移動経路が合理的であることの立証が必要です。

  4. 更新・保険料の負担
    年度更新は毎年必ず行う必要があり、未納状態になると補償を受けられなくなります。保険料は所得に応じて異なるため、作業内容と収入の実態に合わせた選択が重要です。


社労士としての見解とアドバイス

私が現場で多くの一人親方と接して感じるのは、「加入できるのは建設業だけだと思っていた」という誤解が非常に多いことです。特別加入制度は、もはや建設業だけの制度ではありません。
特に現場間を移動する軽貨物運送者や設備工事業者、外構・造園職人なども加入対象となるケースが増えています。
また、元請からの「加入証明書提出依頼」は、単なる形式的な要請ではなく、リスク管理の一環です。事故が発生した際、元請が安全配慮義務を果たしたと立証するためにも、下請一人親方の加入状況を確認することが重要なのです。

一人親方本人にとっても、補償を受けられないリスクを減らし、安心して仕事に専念できる環境を整えるための「自己防衛策」としての加入が望まれます。
将来的には、特別加入の対象業種はさらに多様化し、フリーランス全般を包含する枠組みになる可能性もあります。したがって、早期に加入制度の理解を深め、自身の業務形態に合わせた適正な加入を行うことが重要です。


まとめ

建設業を中心に広がってきた一人親方特別労災制度は、時代の流れとともに対象業種を拡大させています。これにより、建設業界で働く個人事業主も、他業種との連携や横断的な業務を行う中で、より柔軟な補償体制を構築できるようになりました。
一人親方として安全と経済的安定を守るためには、制度の正しい理解と、適切な加入・更新管理が欠かせません。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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