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加入しているのに給付が受けられないケースとその原因

加入しているのに給付が受けられないケースとその原因

建設業の現場では、「一人親方として特別労災に加入しているのに、実際にケガをした際に給付が受けられなかった」という声を耳にすることがあります。形式上は加入していても、手続きや実態の不備によって給付が認められないケースは少なくありません。ここでは、その典型的な原因と防止策について整理します。


1. 加入時の事実と実態が異なるケース

まず多いのが、「加入時の申告内容」と「実際の就業実態」が異なる場合です。特別労災の対象は、あくまで“労働者を使用しない一人親方”であることが前提です。ところが、現場によっては手伝いの職人を日雇いで使っていたり、家族を常時雇っていたりすることがあります。

このような場合、形式上は「一人親方」として加入していても、実態としては「事業主」または「使用者」とみなされ、特別加入の対象外となることがあります。結果として、給付請求をしても「対象外」と判断され、労災補償が受けられないのです。

私が関与したケースでも、「奥さんを経理として雇用していたが、名義上は一人親方のまま特別加入していた」という例がありました。本人は悪意なく手続きしていたものの、労働局の判断では「使用者性が認められる」とされ、給付が不支給となりました。


2. 業務上災害と認められないケース

次に多いのが、「業務上の災害」として認められないケースです。特別労災は、あくまで仕事中のケガや病気に対して補償を行う制度であり、「私的な行動中」や「業務と無関係な移動中」の事故は対象外です。

例えば、現場作業後に仲間と食事に行く途中の交通事故や、私用の買い物中に起きた転倒事故は、原則として業務外災害となります。また、現場間の移動中であっても「請負契約上の業務範囲」に含まれていないと判断されれば、補償対象外となる可能性があります。

特に建設業のように請負単位で仕事が区切られる業種では、「どの現場が業務の範囲に当たるのか」を明確にしておくことが重要です。労災請求時には、契約書や作業指示書、現場入退場記録など、業務との関連を立証する資料が求められる場合もあります。


3. 保険料の未納や資格喪失によるケース

意外に多いのが、加入しているつもりでも「実は資格が喪失していた」ケースです。特別労災は、年度ごとに保険料を納付し、更新手続きを行う必要があります。この年度更新を怠った場合、保険関係が自動的に消滅し、事故が発生しても給付を受けられません。

また、労働保険事務組合を通じて加入している場合、その組合が事務手続きを誤っていたり、本人が書類提出を怠っていたりすることもあります。特に繁忙期の建設業では、更新の案内が届いても後回しにしてしまうことが多く、事故発生後に「加入切れ」が判明するケースもあります。

こうしたトラブルを防ぐためには、年度更新時期(通常6月〜7月)には必ず保険料の納付書控えを確認し、最新の「特別加入証明書」を手元に保管しておくことが重要です。


4. 申請書類の不備・証拠不足による不支給

給付請求時の書類不備も、受給できない原因の一つです。特別労災では、一般の労働者と異なり「使用者による証明」が得られないため、事故の発生状況を自ら証明しなければなりません。事故報告書、診断書、作業内容を説明できる証言などが欠けていると、業務上災害と認められないことがあります。

特に建設現場では、「どの請負先の仕事中にケガをしたのか」「その仕事が契約上の業務に該当するか」を明確にしなければなりません。請求書や契約書を整理しておくことはもちろん、日報や写真など、日常的に業務を記録しておくことが有効です。


5. 故意・重過失による事故

労災給付は、故意に起こした事故や極めて重大な過失によるものについては、全額または一部が支給されない場合があります。例えば、飲酒状態での作業中に転落した場合や、安全帯を着けずに高所作業をしていた場合などが該当します。

建設業では「慣れ」や「時間の都合」から安全措置を軽視してしまうことがありますが、こうした行為は最終的に本人の不利益につながります。安全教育やリスク管理を怠らないことが、労災補償の実効性を確保するうえでも不可欠です。


6. 通勤災害に該当しないケース

一人親方の特別労災でも「通勤災害」は補償対象となりますが、これは“業務に直接関連する移動”に限られます。途中で私用の寄り道をした場合や、通常の通勤経路から大きく逸脱した場合は、通勤災害として認められないことがあります。

また、現場間移動の際に私用の買い物を挟んでいた場合など、「業務のための移動」と「私用行動」の線引きが問題になることがあります。事故が発生した際は、移動経路や目的を正確に記録しておくことが大切です。


7. 建設業特有の“契約のあいまいさ”による問題

建設業における特別労災のトラブルの背景には、「契約のあいまいさ」もあります。口頭での請負や下請け関係が多く、書面での契約が整備されていないと、事故発生時に「業務上か否か」の判断が難しくなります。

私が支援した現場でも、下請け同士の助け合い作業中にケガをしたケースで、どの契約に基づく作業だったのかが不明確で、最終的に給付対象外とされました。現場ではつい「お互いさま」で作業を手伝うことも多いですが、契約外作業に伴う事故は補償されないことを理解しておく必要があります。


8. トラブルを防ぐための対策

給付を確実に受けるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  1. 特別加入の対象要件(労働者を使わない等)を満たしているかを定期的に確認する

  2. 年度更新と保険料納付を忘れずに行い、証明書を最新化する

  3. 契約内容・作業範囲を明確化し、契約書・請求書を保存する

  4. 事故発生時には、現場写真・診断書・日報など客観的資料を揃える

  5. 安全管理を徹底し、重大な過失を防止する

社労士としては、事前の確認体制を整えることが最も重要だと考えます。「入っているから安心」ではなく、「要件を満たしている状態を維持しているか」を常に点検する姿勢が必要です。


9. まとめ

一人親方特別労災は、建設現場で働く個人事業主を守るための重要な制度ですが、制度の仕組みを正しく理解し、実態に合った運用を行わなければ、本来の補償が受けられません。加入後の管理と記録の積み重ねこそが、万一の際の安心につながります。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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