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特別加入における「給付基礎日額」の設定ポイント

建設業に従事する一人親方が労災保険に加入する際、「給付基礎日額」をいくらに設定するかは非常に重要な判断となります。これは、万が一の災害発生時に支給される補償金額の基準となるものであり、日額の設定次第で、給付内容も大きく変わります。実務上は「保険料の負担を抑えたい」という理由で低く設定するケースも見られますが、安易な判断は後悔を招くことがあります。本稿では、特別加入における給付基礎日額の仕組みと、建設業一人親方が設定時に留意すべきポイントを整理します。


1. 給付基礎日額とは何か

「給付基礎日額」とは、労災保険の各種給付金(休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付など)を算出する際の基準額です。たとえば、休業補償給付は給付基礎日額の60%が支給されるため、日額を1万円に設定した場合は1日あたり6,000円の補償となります。

一人親方特別加入制度では、この日額を自ら選択できる点が特徴です。国が定める範囲の中から、最低3,500円から最高25,000円(建設業の場合)までの幅で選択可能です。設定した日額に応じて年間の保険料が変動し、原則として年度更新まで変更できません。


2. 日額設定の基本的な考え方

給付基礎日額の設定は、「自分の平均的な所得に見合った金額」を基準にするのが原則です。厚生労働省の基準では、直近の所得(売上から必要経費を控除した金額)を365日で割った額を参考にします。

たとえば、年間所得が500万円であれば、1日あたりの所得は約13,700円となり、この場合は「1万4千円」前後の給付基礎日額を選ぶのが妥当です。極端に低く設定すると、災害時の補償が生活を支えるには不十分となるおそれがあり、逆に高く設定しすぎると、保険料負担が重くなります。

建設業では仕事の繁閑が大きく、月ごとの収入にばらつきがあることも多いですが、過去2~3年の平均所得を参考にするとより安定した判断ができます。


3. 保険料との関係

給付基礎日額を上げれば上げるほど、補償は手厚くなりますが、その分保険料も上昇します。建設業の一人親方特別加入では、保険料は「給付基礎日額 × 加入日数 × 業種別料率」で計算されます。

たとえば、土木工事業で料率が1000分の18.0、給付基礎日額を12,000円とした場合、
12,000円 × 365日 × 18/1000 = 約78,840円が年間保険料の目安となります。

また、労働保険事務組合を通じて加入するため、これに事務手数料や会費などが加算される場合があります。単純な保険料比較だけでなく、補償とコストのバランスを総合的に検討することが重要です。


4. 過小設定によるリスク

現場でよく見られるのが、「とりあえず安い日額で加入しておく」というケースです。確かに保険料を抑えることは可能ですが、事故発生時には深刻な問題となります。

例えば、給付基礎日額を5,000円に設定していた場合、休業補償給付は1日3,000円(60%)程度しか支給されません。入院や長期休業となれば、生活費を補えないケースが多く、結果的に貯蓄の取り崩しや借入に頼らざるを得なくなる例もあります。

また、障害補償給付や遺族補償給付なども同じ基礎日額で算出されるため、遺族の生活保障にも直結します。社労士として現場を見ていても、低額設定を後悔する相談は少なくありません。


5. 過大設定のデメリット

逆に、給付基礎日額を過大に設定しすぎると、年間保険料が不必要に高くなり、経費負担が重くなります。所得実態を大きく上回る金額を設定した場合、税務上の損金算入にも影響を及ぼす場合があります。

さらに、給付基礎日額の選択は加入時点で確定し、原則として年度途中の変更はできません。したがって、収入に応じて柔軟に見直せるわけではないことも理解しておく必要があります。

適正な水準を見極めるには、年間所得を冷静に分析し、手取り収入・家族構成・生活費なども踏まえてバランスを取ることが大切です。


6. 建設業一人親方における実務的な設定の目安

実務上、建設業の一人親方の場合、次のような目安が多く見られます。

  • 小規模な下請・個人事業主層:日額10,000円前後

  • 現場責任者や職長クラス:日額14,000~18,000円程度

  • 高所・重機等のリスク業務従事者:日額20,000円前後

特に、家族を養っている場合や長期の現場作業が多い場合は、少し高めに設定しておく方が安心です。

なお、年度更新時には前年の所得変動や現場状況を踏まえて再検討するのが望ましいです。特別加入は自動更新されるため、事務組合に任せきりにせず、毎年確認する習慣をつけましょう。


7. 給付基礎日額を見直すタイミング

次のような場合には、給付基礎日額を見直す機会として適しています。

  • 年間所得が大幅に増減した場合

  • 家族構成が変わった場合(結婚・子の誕生など)

  • 業務内容が変わり、リスクが高まった場合

  • 上乗せ補償制度(民間保険)を導入した場合

とくに上乗せ補償制度を併用している場合、給付基礎日額を低めにしても全体の補償水準を維持できるケースもあります。複数制度を組み合わせる際は、社労士や保険担当者に相談しながら全体設計を行うことが重要です。


8. 社労士からのコメント

建設現場では、日々の危険作業に従事しながらも、「自分がケガをするとは思っていない」という心理が働き、特別加入を形式的に済ませる方が少なくありません。しかし、事故は突然起こります。補償の中心となる「給付基礎日額」を適正に設定しておくことは、事業と家族を守るための最低限の備えです。

私が相談を受ける中でも、実際に長期療養となり、「もっと高く設定しておけばよかった」と話す方が少なくありません。反対に、収入に見合った適切な日額を選んでいた方は、経済的にも精神的にも安定した療養ができたと話されます。

特別加入は、単なる形式的手続きではなく「リスクマネジメント」の一環です。事務組合任せにせず、自身の事業規模・収入・生活状況に応じて、主体的に給付基礎日額を設定することが大切です。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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