〒322-0039 栃木県鹿沼市東末広町1940-12 シマダヤビル3階

お気軽にお問合せください
営業時間:9:00~17:00     
定休日 :土曜・日曜・祝日 
友だち追加

お電話でのお問合せ・ご相談はこちらへ

0289-77-7011

他業種兼業の一人親方が注意すべき手続きの落とし穴

建設業の現場では、近年「一人親方」として複数の仕事を掛け持ちする人が増えています。建設現場での作業を中心にしながら、例えば内装仕上げと電気工事を兼業したり、建設業の傍ら農業や運送業を営んでいるケースもあります。こうした兼業は収入の安定や将来の展望を見据えた動きとして理解できますが、労災保険の「特別加入制度」を利用する際には思わぬ落とし穴があります。

本稿では、他業種を兼ねる一人親方が注意すべき特別加入手続きのポイントと、社労士として現場で見てきたトラブル事例を交えて解説します。


1. 「主たる業種」の特定が重要な理由

一人親方の特別加入は、労働保険事務組合を通じて申請する仕組みになっていますが、加入できるのは「特別加入を認められた業種」に限られます。建設業はその代表的な対象ですが、他の業種によっては特別加入の対象外となることもあります。

例えば、建設業を中心に営む大工が、冬季に農業を行っている場合、建設業として加入していれば問題はありませんが、「主たる業務」が農業に移っているとみなされると、建設業の特別加入が適用されない可能性があります。特別加入は「主たる業務」に対してのみ有効であるため、どの業種が中心なのかを明確にしておくことが不可欠です。

社労士としての経験上、税務署に提出する「開業届」や「青色申告書類」に記載された業種が建設業以外である場合、監督署の審査時に指摘を受けるケースも見られます。


2. 「業種ごとに」加入できるわけではない

誤解しやすいのが、「建設業」と「運送業」など、複数の業種を同時に行っている場合に、それぞれの業種で特別加入できると思い込んでしまう点です。特別加入制度は「個人単位」での加入であり、業種ごとに別々に加入することはできません。

たとえば、普段は建設現場で足場作業を行い、閑散期に軽トラックで荷物運搬を請け負うようなケース。この場合、労災事故が運送業の作業中に発生したとしても、建設業の特別加入では補償の対象外となる可能性があります。

事故時に「その作業が加入対象業種の範囲内かどうか」が厳密に判断されるため、業務内容が建設現場以外に及ぶ場合は、あらかじめリスクを認識しておく必要があります。


3. 労働保険事務組合への届出内容に注意

特別加入の手続きは、労働保険事務組合が代理して行いますが、提出書類に記載する「事業の種類」や「作業の内容」が曖昧な場合、後々トラブルにつながります。

例えば、加入申請書に「建設業」と書いていても、実際の業務内容が「リフォームに付随した家電設置」や「配送作業」であると、労働基準監督署から確認が入ることがあります。さらに、万が一の労災申請時には「加入時の届出内容」と「実際の作業内容」が照合され、内容が一致していないと給付が認められないこともあります。

建設業の範囲に該当する作業かどうか迷う場合は、労働基準監督署または社労士に事前に確認することが肝要です。


4. 「他業種の現場」での事故は補償対象外の可能性

他業種で作業中にケガをした場合、特別加入による補償を受けられないことがあります。建設業の特別加入はあくまで「建設の事業に従事する作業中の災害」が対象であり、他業種の現場での作業中は適用範囲外です。

例えば、建設一人親方が冬季に除雪作業の委託を受けていて、その際にケガをした場合、除雪が「建設の事業」とみなされない限り、労災保険の給付を受けることはできません。

また、工場の設備設置などに関与する際も、その業務が請負契約上「建設業」として扱われているかどうかで判断が分かれます。保険給付が認められるか否かは、契約内容や現場の実態に左右されるため、書面上の整理が極めて重要です。


5. 税務上・行政上の届出不整合にも注意

実務上よく見られるのが、税務署や市町村への届出と、労働保険の加入内容が一致していないケースです。開業届で「運送業」と届け出ているにもかかわらず、労働保険上は「建設業」で加入している場合、行政機関間で情報が照合された際に不整合として扱われることがあります。

特に近年はマイナンバー制度の普及により、個人事業情報の紐づけが強化されており、業種の整合性は以前にも増して厳密に確認されるようになっています。

社労士としては、開業届・確定申告書の記載内容と、労働保険事務組合に提出する事業概要書の記載内容が一致しているかを確認するよう助言しています。書類間の齟齬を放置すると、加入資格そのものが取り消されるおそれもあるため注意が必要です。


6. 労災申請時の「作業証明」で苦労する事例

他業種兼業の一人親方に多いのが、労災申請の際に「どの現場の、どの仕事中に起きた災害なのか」が証明しづらいという問題です。
特に、同日に複数の現場を回るような働き方をしている場合、事故が発生した時点での作業内容を明確に説明できなければ、給付が認められないケースもあります。

社労士として申請支援を行う際には、請負契約書や作業指示書、日報などを確認し、災害当時の作業が特別加入対象業種に該当するかどうかを整理します。これらの証拠書類を日常的に保管しておくことで、いざという時にスムーズな申請が可能となります。


7. 兼業を行うなら「リスク分散」と「補償見直し」を

もし他業種兼業を行う場合、特別加入だけに頼らず、民間の上乗せ保険や業務災害補償保険などを組み合わせることが望ましいです。
特別加入制度は国の制度であり安心感はありますが、対象業務が限定されるという点では万能ではありません。

社労士として顧問先に助言する際も、「どの仕事が建設業にあたり、どこからが他業種なのか」を明確に線引きし、必要に応じて民間保険の併用を検討するよう勧めています。
リスクを事前に把握し、手続きや書類の整合性を整えておくことが、結果として自分自身の安全と事業の継続性を守る最善策です。


まとめ

他業種を兼ねる一人親方にとって、特別加入制度は心強い保障の仕組みですが、その反面、手続きの理解不足から給付を受けられないケースも珍しくありません。
建設業を中心に活動しているのであれば、「主たる業種」の確認、届出内容の整合性、業務範囲の明確化を徹底することが不可欠です。

日々の業務記録を残し、契約関係を整理しておくことが、いざというときの安心につながります。
また、社労士や事務組合と密に連携しながら、定期的に加入状況を見直すことをお勧めします。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

お問合せ・ご相談はこちら

お問合せ・ご相談は、お電話またはフォームにて受付しております。
まずはお気軽にご連絡ください。

お電話でのお問合せはこちら

0289-77-7011
営業時間
9:00~17:00
休業日
土曜・日曜・祝日

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・ご相談

0289-77-7011

フォームでのお問合せは24時間受け付けております。お気軽にご連絡ください。

アクセス

住所

〒322-0039
栃木県鹿沼市東末広町1940-12
シマダヤビル3階
鹿沼駅から徒歩5分

営業時間

9:00~17:00
フォームでのお問合せは24時間受け付けております。

定休日

土曜・日曜・祝日

よくあるご質問