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保険給付の範囲と金額の目安
(休業補償・障害補償など)

一人親方として建設現場で働く方にとって、仕事中のケガや事故は常に隣り合わせのリスクです。特に高所作業や重機の取り扱いを伴う現場では、万一の事故に備えた「労災補償」が重要になります。通常の労働者であれば会社を通じて労災保険に加入していますが、一人親方は「特別加入制度」によって自ら労災保険に入る必要があります。本稿では、一人親方が受けられる保険給付の範囲と、その金額の目安について整理していきます。


1. 労災保険の給付体系の基本

労災保険の給付は、大きく分けて「療養補償」「休業補償」「障害補償」「遺族補償」「介護補償」などに区分されます。一人親方が特別加入している場合も、この区分と支給内容は通常の労働者とほぼ同じです。

ただし、一般労働者と異なるのは、給付の算定基礎となる「給付基礎日額」を自ら選択する点です。給付基礎日額は3,500円から25,000円までの範囲で選べ、これを基準として各種給付額が算定されます。高めに設定すれば給付額は増えますが、その分、年間の保険料負担も大きくなる点に注意が必要です。


2. 療養(補償)給付 ― 治療費は原則全額補償

業務上のケガや病気を治療するために必要な医療費は、労災指定医療機関であれば原則として自己負担はありません。診療費、薬代、手術費、入院費、通院交通費なども労災保険から支給されます。
もし指定外の医療機関で治療を受けた場合は、一時的に自己負担し、後日請求する「療養費用の支給請求」となります。建設現場では緊急搬送が多く、最初に指定外の病院に運ばれるケースもあるため、領収書の保管と請求手続きの把握が大切です。


3. 休業(補償)給付 ― 休業4日目から支給

労災事故によって働けなくなった場合、休業4日目から「休業(補償)給付」が支給されます。支給額は「給付基礎日額の80%」で、内訳は次のとおりです。

  • 労災保険から60%(休業補償給付)

  • 特別支給金として20%(国庫負担)

例えば、給付基礎日額を12,000円で設定していた場合、1日あたり9,600円が支給される計算になります。仮に1か月(30日)休業した場合、288,000円が支給されます。

建設業の一人親方は、請負契約上、休業中の収入補償が存在しないことが多く、実際の生活費をこの給付で補うことになります。したがって、実際の月収に見合った基礎日額の設定が重要です。社労士としても、年間所得や現場単価をもとに「現実的な補償水準」を見積もるサポートを行うことが多いです。


4. 障害(補償)給付 ― 後遺障害の等級に応じて支給

労災事故の治療後、後遺障害が残った場合には「障害(補償)給付」が支給されます。等級は1級から14級まであり、障害の程度に応じて給付内容が異なります。

  • 1〜7級:障害補償年金(年金形式)

  • 8〜14級:障害補償一時金(一時金形式)

例えば、3級の障害の場合、給付基礎日額の313日分が年金として支給されます。日額12,000円なら年間約375万円の支給となります。一方、10級の障害であれば給付基礎日額の200日分、つまり約240万円が一時金として支給される計算です。

特に建設現場では、骨折や神経損傷などで後遺障害が残る事例が少なくありません。私が相談を受けた事例でも、右手親指の機能低下で「12級」に認定された方がいました。この場合、給付基礎日額10,000円で200万円の一時金を受け取ることができ、生活再建の一助となりました。


5. 遺族(補償)給付 ― 万一の死亡時に家族へ支給

不幸にも業務災害で亡くなった場合、遺族に対して「遺族(補償)給付」が支給されます。
支給対象は、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順で、主たる生計維持関係にある者が優先されます。支給額は、給付基礎日額の153日分から245日分の範囲で、遺族の人数によって変動します。

例えば、配偶者と子1人が遺族の場合、給付基礎日額の223日分が年金として支給されます。日額15,000円なら年間約335万円となります。また、年金を受け取る遺族がいない場合は「遺族一時金」として1,000日分が支給されます。

建設現場の事故は重大災害につながるケースもあるため、遺族補償の仕組みを理解しておくことは、残された家族の安心にもつながります。


6. 介護(補償)給付 ― 重度障害者への継続支援

1級または2級の重度障害を負い、常時または随時の介護が必要と認定された場合、「介護補償給付」が支給されます。
支給額は実際に要する介護費用に応じて変動し、常時介護では月額10万円〜14万円程度が目安です。外部の介護サービス利用や家族介護の有無によって支給方法が異なります。


7. 一人親方における特有の注意点

一人親方の特別加入では、給付の内容そのものは労働者と同じですが、いくつかの注意点があります。

  • 労災認定の判断がシビア
    請負契約で働くため、事故が「業務上」と認められるかが争点になることがあります。現場管理者や元請への報告、作業日報などの証拠保存が重要です。

  • 保険料と補償額のバランス
    高い日額を設定すると補償は厚くなりますが、年間保険料が数万円単位で変動します。実際の所得に見合った設定を行うことが望ましいです。

  • 給付請求書類の不備リスク
    特別加入者は自ら請求書を作成するため、書類不備で支給が遅れる事例も見られます。社会保険労務士に相談し、確実な手続きを行うことが安心です。


8. 社労士からのコメント

建設現場の一人親方の方々は、常に現場責任と収入リスクを背負って仕事をされています。万一のケガによって数か月現場に出られなくなると、生活資金や事業継続が一気に困難になります。実際に、労災給付によって救われた方もいれば、「加入しておけばよかった」と後悔される方も見てきました。

特別加入は「もしもの時の経営リスク対策」です。現場の危険度や収入状況を考慮し、最適な給付基礎日額を設定しておくことが、将来の安心につながります。加入後も、更新時に見直すことをおすすめします。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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